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いきいきOB訪問2

ふる里の民話を、紙芝居で後生に残す

中村 栄美子さん

「誰かが伝えないと、糸魚川にたくさんある民話は、やがて忘れ去られてしまう」。現代の語り部、中村栄美子さん。ライフワークとなった民話の伝承活動は34年にもなる。きっかけは在職中の一つの仕事だった。

本文

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ふる里の民話を、紙芝居で後生に残す(PDFファイル 1.5MB)

サイドストーリー

「おしょろばあさん」の紙芝居 はじまりはじまり

今回、取材に訪れたのは新潟県糸魚川市能生(のう)地区にある、藤崎(とうざき)観音堂。どこまでも青く続く海岸線から、少し入ったところにある小さなお堂です。


藤崎観音堂


日本海

藤崎観音堂は、毎年1月17日に行われる「裸胴上げ祭り」で有名です。身を清め、六尺ふんどしをしめた裸の若衆が、その年の厄年の人をつかまえて「サッシャゲ、サッシャゲ」のかけ声とともに天井にむかって放り上げる奇祭が行われる所です。天井板を破るほどの勢いで放り上げられることもあり、熱気と歓声が沸きあがるそうです。

紙芝居はこの「藤崎観音堂を守る会」主催で開かれました。お堂には、大人20人ほど、子ども10人ほどが集まりました。中村さんは、藤崎観音堂近くの名所旧跡の伝説を少し話して、まずは箕面紙芝居まつり(大阪)で優秀賞を受賞した「おしょろばあさん」の紙芝居から始めます。

「おしょろばあさん」とは、三途の川で死者の衣服をはぎ取る「奪衣婆(だつえば)」のことで、全国では健康に関する信仰を受けていますが、糸魚川市能生は海辺の街で、海女が海に潜って貝や海草を採るため、耳を悪くする人が多かったので、耳を治してくれる神様として祀られています。「おしょろばあさん」の話は、能生・藤崎に住むおばあさんから聞きとった話だそうです。紙芝居が終わると、おしょろばあさんの像に、子どもも大人も手を合わせています。


おしょろばあさんの像

紙芝居の間にレクリエーションを挟むのが人気の秘訣

その後も紙芝居は、横浜紙芝居コンクール優秀賞「原山の地蔵」、同コンクール優秀賞「立ちすくみ如来」と続きます。演目はその日の観客の年齢に合わせて選択。
さらにユニークなのは、単に紙芝居だけを語るのではなく、途中にレクリエーションを挟みます。これが大人も子どもあきさせない工夫なのです。さすが、レクリエーション・インストラクターの資格を持っている中村さんならではの上演会です。

例えば、童謡に合わせた簡単な健康体操もそのひとつ。

「今日は、子どももいるのでみんなで歌えるような童謡を歌います。そして、右手でグー、左手でチョキ。じゃあ、ぞうさんを歌いながら一緒にやりましょう」と言い、歌いながら、右手でグー、左手でチョキ。今度は反対、右手でチョキ、左手でグー。簡単なようで、これがなかなかできません。子どもたちからも、できた、できないと笑い声が聞こえてきます。テンポ良く、5曲ほど体操も変えて観客と一体となって楽しんでいます。

次に、子ども向けにちょっとしたクイズ大会。クイズごとにイラストが書かれたボードを出しながら、子どもたちに語りかけます。

「入り口は1つ、出口は2つ。なーんだ?そうズボン、正解!」できた子どもには、あめ玉を一つ。テンポ良く、次々とクイズが出され、子どもたちもあめ玉の数を競うように、クイズにのめり込んでいきます。そろそろ時間ですというと、子どもたちから「もっと、もっと」とリクエスト声があがります。大人も一緒に、それを微笑んで見ている様子が印象的でした。

「こうして、レクリエーションを挟むと、1時間はあっという間にすぎでしまいます。観客もあきることなく、紙芝居を楽しむことができるのではないでしょうか。今日は、子どももいたので、子ども向きの紙芝居を多めにしました。大人だけなら、親鸞聖人にちなんだ紙芝居を史実の解説を挟みながら、二、三話紹介しています」

この日は午前中、老人ホームでも上演してきたとか。でも、1日、2講演が限界で、それ以上やると、喉がつぶれて声が出なくなってしまうといいます。喉の健康管理には、気を遣うといい、がんばりすぎず、コンスタントに声を出し続けることが一番だそうです。

民話を知って、ふる里の素晴らしさを再確認

民話といっても、その世界は奥が深いものがあります。
「民話とは、昔話と伝説と世間話の3つを合わせて民話といいます。民話という言葉ができたのは昭和24年、木下順二作「夕鶴」」を民話劇としたのがはじめ。意外と新しい言葉です」

また、紙芝居の最後には「いちご栄えもうした」で語り終わります。語りには形式があり、それに従って話します。「一寸法師」や「猿のむことり」等の昔話は、「むかし、むかし、、、」で語り出しますが、信じなくてもいいという宣言になります。そして、終わりには「いちご栄えもうした」の結語をつけますが、物語がハッピーエンドではない場合は「いちご下げ申した」といいます。この他、結語には「いちごさっけ」「えちやポ〜ンとさけた」などがあり、地方によって異なります。

「古い昔話には信仰的機能があります。ストーリーの中に教訓的なことを織り込んで、次の世代に伝えていくんです。昔話をすることで、道徳教育をしていたんですね。
昔話には、昔の信仰や生活・考え方が織り込まれていて、風俗や信仰、日々の暮しをうかがい知ることができます。私たちのふる里には、かつてこれほど豊かで素晴らしい日々の生活があったと、あらためて感じることができるんです。

糸魚川は自然の中に遠いふる里の昔がとけこんで、穏やかで温もりのあるところ。糸魚川にはたくさんの民話があります。民話を通じてふる里を深く知れば、ふる里を見る目が豊かになり、ふる里っていい所だなと実感します。だからこそ、もっと多くの人に紙芝居を見て聞いてもらいたいと思っています」

中村さんの民話は、ホームページ『糸魚川の民話【新潟県糸魚川・西頸城】』に毎月2話ずつアップされています。スマートフォンで聞くことができますので、中村さんのやさしい語りをぜひ聞いてみてください。

(LA No.349)

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