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電話局のある風景

京都の街に新しい風を吹かせる
旧京都中央電話局「新風館」(京都府京都市)

逓信省、電電公社、NTTと移り変わってきた電気通信事業の歴史。日本全国に残る歴史的な電電建築物や街のシンボルとして今なお活躍する施設など、元電話局や通信施設とその周辺の街を訪ねるコーナー『電話局のある風景』。

今回は、歴史と文化の街京都の古い電話局を活かした商業施設「新風館」と、近代遺産「琵琶湖疏水」を訪ねます。

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冊子本文はPDFにてご提供しております。本ページをご覧いただく前に是非ご一読ください。

旧京都中央電話局「新風館」(京都府京都市)本文 (PDFファイル 0.6MB)

サイドストーリー

琵琶湖疏水を歩こう

琵琶湖疏水は、琵琶湖と京都を水路で繋いで、産業や水上交通に役立てようという京都人の夢を叶えた、明治時代の歴史的土木建造物です。

琵琶湖疏水を歩くのであれば、まずは疏水の源である取水口を見ようと琵琶湖にいってみました。車のナビを頼りに探せば何とかなるだろうと行ってみたところ、ナビに載っていませんでした。それならば、琵琶湖の西岸を北に進めば、何とかなるだろうと走ってみたのですが、目印さえありません。
もし、皆さんの中に、琵琶湖疏水の取水口へ行ってみたいとお思いの方がいたら、目標はひとつです。三井寺の麓の琵琶湖岸です。最寄駅は京阪電気鉄道石山坂本線の三井寺です。それで辿り着けます。
橋の上から取水口の反対側、琵琶湖の湖面を眺めていると、京都より海抜が高いというのが実感できません。しかし、琵琶湖の海抜は約86メートル。ここから、かなり大量の水が京都に向かって疏水を下って来ます。

左の水路の突き当たりが三井寺
左の水路の突き当たりが三井寺

琵琶湖側は大津港
琵琶湖側は大津港

ところで、読者の皆さんは、京都に行かれたことはありますか。

私がはじめて京都を訪れたのは、中学校の修学旅行でした。
昔から修学旅行の定番ですよね。40年以上も昔のことですから、細かなことは良く覚えていませんが、金閣寺、銀閣寺、清水寺、宇治の平等院などへ行った記憶があります。平安神宮はどうだったでしょうか。
お土産は、清水焼風の湯飲みと肩に灯籠を担いだ鬼の置物(興福寺の天燈鬼像と思われる)。この置物、まだ実家の応接間にあります。

2度目は高校の卒業記念旅行。友人と二人、親に内緒でバイクで行きました。京都駅のベンチで眠り、西本願寺で朝の瞑想をして帰ってきました。青春です。

社会人になってからは、仕事の関係で時々行く機会がありました。漢字と仏教の伝来に関する文化映画の取材では、京都・奈良の神社仏閣に何度も通いました。一般の観光客では入れない場所や、見ることのできない仏像などを「国の関係機関の撮影のため」という理由で拝観でき、貴重な体験をさせて頂きました。

最近でもなにかと仕事で縁があり、京都にはおそらく30回ほどは行っていると思います。ところが、観光で行くわけではないので一日を丸々自分の好きなように使うことはできません。ですから、清水寺や平等院のように何度も行くところもあれば、一度も訪ねていない場所もたくさんあるわけで、その代表的な場所が「下鴨神社」「南禅寺」、そして「琵琶湖疏水」なのです。モノクロ写真で見た琵琶湖疏水のインクラインは、線路が水路の中に消えていくという、なんとも不思議な景観で印象に残っていました。
そうだ、近代遺産の元電話局の取材ならば、セットで紹介するのは「琵琶湖疏水」だ。行かなくちゃ。ということで、今回ようやく疏水を歩いてみることとなりました。

ここからはアルバム風に琵琶湖疏水散歩を進めていきましょう。

散歩の順路は概ね下記で、ゆっくり歩いて、休んで食べて2時間程度です。

琵琶湖疏水記念館〜インクライン〜蹴上ダム〜蹴上発電所取水口〜疏水分線〜南禅寺水路閣〜南禅寺〜湯豆腐

琵琶湖疏水記念館

■琵琶湖疏水記念館
琵琶湖疏水散歩は、ここから始めましょう。琵琶湖疏水の基礎知識を学習し、パンフレットをもらってツアーのプランを立てましょう。
入館無料です。
〒606-8437
京都市左京区南禅寺草川町17
TEL: 075-752-2530

記念館のバルコニーの前には、広々とした運河の景色が広がっています。
インクラインが使われなくなり、船が通行しなくなって数十年経つ今も、豊かな水量です。
記念館の対岸から遊覧船が出ています。のんびりと運河を巡るのも楽しみ方のひとつです。

記念館の地下1階から外に出ると、左手の方向にインクラインの入口があります。運河から緩やかなスロープで傾斜が続いています。
通常の鉄道の倍以上の幅がありそうな軌道が、斜面の上まで続いています。

インクラインの両側はソメイヨシノの並木です(写真左上)。あと1週間早ければ、素晴らしい桜花のトンネルの中を歩けたかも知れません。
私にとっては、京都観光の中ではマイナーなイメージの強い「インクライン」ですが、なかなかの人気のようでハイキング仕様で身支度した中年カップルや大人数のグループ(写真右上)に出会うこともありました。
夏の暑さや冬の寒さが厳しいといわれる京都ですが、春や秋にはハイキング気分で山里を歩いてみるのもいいかもしれません。

インクラインを上りきると船着き場があります。この風景こそ、私が写真で見た不思議な風景です。線路が水の中に消えていきます。
琵琶湖から疏水を通ってここまできた船は台車に乗せられて、インクラインを下って下流の運河まで運ばれます。
国立国会図書館のウェブサイト「写真の中の明治・大正[関西編]」の「蹴上インクライン」を見ると、写真のような立派な台車ではなかったようですね。台車を動かすインクラインの動力ですが、さすがに人力ということはなく、琵琶湖疏水を利用した水力で発電した電力を使っていました。

インクラインの船着き場は、蹴上ダムの一部で、第1疏水と第2疏水の合流地点でもあります。琵琶湖から流れてきた水は、ここで発電用と水道用に分けられます。また一部は疏水分線として、南禅寺方向に向かって流れていきます。


赤いゲートの手前の手すりの部分が通路

琵琶湖疏水建設の目的の一つが、水力発電でした。水力発電としては日本初の事業用発電所だった蹴上発電所の電気を動力として、多くの産業が芽生え、日本初の路面電車が走り、京都の街は活性化しました。まさに、日本の「産業革命」だったのでしょうね。

蹴上発電所の取水施設の横が送水管をまたぐ通路になっています。その上からは京都の街が遠望でき、二本の送水管が蹴上発電所をめがけて一直線に傾斜を下って行きます。
少し見づらいですが、右の写真の金網の下から赤レンガの建物の右側を通っているのが送水管です。発電所は今でも稼働しているということです。

送水管の上を越えて、取水施設の右手奥に回り込んでいくと、疏水分線の分岐点に出ます。突然森の中にきたような静けさです。
疏水分線の右側は山、左側は崖です。平日だからなのか、通行人がいないと細い道を歩いて行くのに腰が引けるほどの静けさです。幸い私には、物事に頓着しないプロデューサー氏の同伴があり、時々ではあるものの観光客も行き交っていました。
しばらく歩くと、歩道は行き止まりとなり、疏水だけがまっすぐ伸びる場所に出ます。疏水を渡り、坂を下ります。

農業用の灌漑用水路にしか見えなかった疏水分水の構造物が、突然、古代ローマの遺跡に見えてきます。これが有名な、南禅寺の水路閣です。
近代建築に欠かせない赤レンガと美しいアーチ構造のデザイン。京都の代表的な景観に相応しい存在感です。歴史ある境内のど真ん中に、当時としては場違いなこの建造物を作らせた南禅寺も立派ですね。今では、南禅寺と水路閣は一体となっています。

南禅寺水路閣といえば、やはりこのアングルですね。
テレビのサスペンスドラマにどれだけ登場したか分かりませんが、一度見ただけで印象に残る風景です。ベストアングルと思われる地点は、カメラを持った観光客の順番待ちとなります。右のアングルから無人の風景を撮影するのに、何人の観光客をやり過ごしたことか。

南禅寺の中心的建物、法堂。外国人観光客の姿が目立ちます。
“円安”のご利益があったのでしょうか。大変慣れた手つきで線香を立て、熱心に拝んでいました。

これが南禅寺の三門です。でかい。でかいです。高さは約22メートルあります。しかし、実際に下に立つとその数字より迫力があります。こんなでかいもの、どうやって建てたんだろう、と単純に疑問が湧いてきます。
歌舞伎「楼門五三桐」(さんもんごさんのきり)で有名な、石川五右衛門が「絶景かな、絶景かな。春の宵は値千金とは…」という名科白を吐くのがこの三門です。五右衛門の仇の真柴久吉になった気分で、屋上の五右衛門を下からにらみつけてやろうと見上げるのですが、とても目線が合いそうな間合いではありません。とにかく、でかいのです。「でっけぇかな、でっけぇかな」。
あとになって、三門に上っておけば良かったと後悔しました。次に来たときは、五右衛門の気分を味わうつもりです。

南禅寺といえば、食べ物は「湯豆腐」です。
南禅寺に来たことがない私ですから、もちろん名物の「湯豆腐」も食べたことがありません。この機会、逃すわけにはいきません。
事前にインターネットで調べてみると、南禅寺を出てすぐの所に「順正」という名店があるということ。迷い無く門をくぐります。順正は、湯豆腐や会席料理はもちろん美しい庭園でも有名です。
予約無しでも食べられる「ゆどうふコース」は、3,000円と4,000円(ともに税込み)の2タイプ(2013年5月現在)。コース最後のごはんと香の物に辿り着く前に、満腹になってしまいました。
味ですか。美味しかったです。とくに豆腐は、大豆の風味と食感のバランスが最高でした。

(LA No.164)

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