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OB対談 | いきいきセカンドライフ1

山登りしてみました

 皆さん、山登りをされたことありますか。経験された方も多いと思いますが、いつ頃のことですか。
 私は中学校の集団登山で北アルプスの燕岳(つばくろだけ)に登ったことがあるだけです。燕岳といえば地元では、「下駄でも登れる」と言われて山扱いされていませんが、標高は2,763メートル、登山道が整備されているとはいえ思いつきで登れる山ではありません。学校の指導があって私も近所の同級生と一緒に、高低差は2〜300メートルの裏山に何回か登って、本番に備えました…。
 もう40年以上も前のことですから定かな記憶はありませんが、宿泊した山荘の燕山荘(えんざんそう)から見た星空と翌朝雲海の彼方に見えた富士山が美しかったことを良く覚えています。とはいえ、「また登りたい」という気持ちにはなりませんでした。信州弁で言う「ずくなし(面倒くさがり屋)」ですし、アルプスは遠くにあって眺めるものと思っていました。そしてなにより「お願いだから山登りだけはしないでね」と懇願する母親の言うことを聞いておくことにしました。毎年北アルプスでは、相当数の遭難事故が起きていましたから。
 その後、山といえば「北アルプスの乗鞍岳」をはじめ「スイスの高い山」や「カナダの高い山」や「ニュージーランドの高い山」などいくつかの頂きに立ったことはありますが、すべて車やケーブルカーに乗って登ったもので、自分の足で登頂したことはありません。

裏山の長峰山頂(車で行けます)から見る北アルプスの眺め。
裏山の長峰山頂(車で行けます)から見る北アルプスの眺め。

 そんな私が、体験レポートのために、高尾山登山に挑戦しました。
 「なんだ高尾山か、幼児でも登れる山じゃないか」などと馬鹿にしてはいけません。たしかに息子は幼稚園の遠足で登っていますが、それはケーブルカーに乗ってのこと。私だってケーブルカー利用なら、登ったことがあります。30年ほど前、薬王院の取材のため撮影機材を持って登りました。それでもケーブルカーを降りてから、結構きつかったような…。
 今回は、ちゃんと自分の足で登ります。

 3月の終わりの日曜日、高尾山に向かいました。
 日曜日にしたのは、まわりに人がいたほうがいいだろうという判断です。一人で山に入って、万一にでも転んで骨折したり、転落したり、落石の下敷きになったり、心筋梗塞を起こしたり、熊に襲われたり等したとき、誰もいなかったら死んでしまうかもしれません。日曜日の高尾山なら、春まだ浅いとはいえ誰もいないなんてことはないでしょう。

 高尾山登山の最寄り駅は、京王線の高尾山口です。
 今回私は車で行きました。高尾山口駅近くの市営駐車場に停めようとしたのですが、“満車”の看板で入れません。通り過ぎて、私設の駐車場を探しますがどこも一杯です。午前11時過ぎ。山登りのスタートには遅すぎるのでしょうか。完全に出遅れです。高尾駅まで戻って車を停めて、電車で一駅来ようと決めて甲州街道をUターン。駐車場の前まで来ると、丁度出て行く車があり、係員が満車の看板を動かしたところで車を停めることができました。

 車を降りて歩き始めたらたらまずは高尾山口駅の前を通って、高尾登山電鉄の清滝駅に向かいます。川沿いの道を5〜6分歩くとケーブルカーの清滝駅があります。

京王線高尾山口駅
京王線高尾山口駅

高尾登山鉄道清滝駅(ケーブルカー乗り場)
高尾登山鉄道清滝駅(ケーブルカー乗り場)

 高尾山の登山ルートはいくつかありますが、主なコースは4つです。

  1. 清滝駅の右手から整備された都道を登るコース。
  2. ケーブルカーやリフトを利用して尾根まで登るコース。
  3. 清滝駅の左手から渓流沿いに琵琶滝経由で登るコース。
  4. 清滝駅の左手から稲荷山経由で登るコース。

 今回は、この中でもっとも難易度が高いとされる「稲荷山コース」で登ります。頂上までは3.1km、標準タイムは90分ということです。

高尾山口駅前のコース案内図
高尾山口駅前のコース案内図
*コースの概要はこちらで確認して下さい。

「稲荷山コース」の登り口
「稲荷山コース」の登り口

岩や根が露出した登り道
岩や根が露出した登り道

 清滝駅の左側の道を行くと、すぐ左手に稲荷山コースの入口があります。渓流に掛かる橋を渡ると、即階段です。
 登り始めます。登ります。ず〜っと階段です。
 私はロードバイクを趣味でやっているのですが、この冬になってから自転車のトレーニングを1回もやっていませんから、すぐに息が切れてきます。というか、自転車でも上り坂はからっきしダメです。ペースを落とします。次々に抜かれます。10歳以上年上とおぼしき人生の先輩に抜かれます。幼稚園児くらいの少年と父親のコンビに抜かれます。でも、無理はしません。まだ登り始めたばかりなのですから。
 登りはじめて約10分、ようやく階段は終わりましたがまだまだ急坂です。心拍数は130〜150くらいでしょうか。
 20分過ぎて一息つきました。後ろから来る人に道を譲らなくても、追い越して行ける道幅です。しかし、木の根や岩が露出していて、足が上がらない私はすぐ躓きそうになります。
 こんなところで躓いてひっくり返ったら・・・笑いものですから、必死でバランスとります。
 約30分で1km地点に到着。休憩。水分補給します。

稲荷山展望台から都心方向を望む
稲荷山展望台から都心方向を望む

1.4km地点に展望台があります。
 麓の八王子市内から遠く新宿、都心まで望むことができます。空気が澄んでいたらスカイツリーも見えるかもしれません。
 この展望台には休憩できる東屋とトイレがあります。トイレの前を若い女性グループが「くっさ〜い」と鼻をつまみながら通り過ぎていましたが、山の上ですから、無いよりましと思いましょう。

尾根伝いに続く登山道
尾根伝いに続く登山道

 少し平坦な道を歩いたと思ったら、上って下ってまた上り。無理しなくても歩けるコースを自分のペースで進んで行くと、遂に、頂上アタックの最終キャンプである休憩所に着きました。
 頂上方向を見上げると、嫌な予感です。階段の終わりが見えないくらい先まで続いています。

頂上周回道路に面した休憩所
頂上周回道路に面した休憩所

登りはじめ
登りはじめ

中程から下方を望む
中程から下方を望む

頂上まですぐ
頂上まですぐ

 階段を上り始めました。何段あるか分からないので慎重にスタートします。でも、すぐに息が上がってきます。心拍数も自転車で上り坂に挑む時の180近くになっていると思われます。とにかく、苦しい。数十年前、奈良の室生寺の奥の院に向かう階段を駆け上がっていた頃とは隔世の感あり。何度か休みながらアタックします。それなりに頑張りましたが、休んでいるところを追い越した幼児に、頂上付近で再び抜かれてしまいました。(写真右)情けない。
 登りはじめて90分。頂上に到着しました。
 頭の中ではQueenの「We are the champions」が鳴り響き、幻想では思い切り両手を突き上げているのですが・・・
 現実は、遊園地や動物園の広場かと見間違う光景です。凄い人です。

頂上ビジターセンター周辺の人混み
頂上ビジターセンター周辺の人混み


 

 富士山が見えます。都心も眺められます。いいところですがそれにしても人が多すぎて、お弁当をひろげる場所が見当たりません。人混みを避けるように、薬王院方向に下っていきます。しかし、こちらの登山道は、上ってきた稲荷山コースと人の数がまったく違います。ベンチをみつけてお昼にします。背後を通る人の気配が尋常じゃないくらい多いです。落ち着かないけれど、仕方ありません。ここで食べることにしました。

 おにぎりや水筒を出すついでに、バッグの中身を全部出して写真を撮りました。
 上記以外には、この写真を撮ったコンパクトデジカメと財布、バッグから出し忘れていた非常食(パック羊羹、ゼリー食、飴)を持ってきました。
 高尾山日帰り登山の準備としては、十分と思われます。
 スポーツをやり慣れている方は水よりスポーツドリンクの方が良いのでは、と思われるかもしれませんが、ケガをしたときや口の中がべたつくときなど真水があると助かります。

今回持ってきた物

<今回持ってきた物>
画面左から
・背負い型のディバッグ
・防寒着 ・タオル ・手袋
・保温水筒(温かいほうじ茶入り)
・水ボトル(真水入り) 
・おにぎり2個
・携帯電話 ・敷物 ・雨合羽

 お昼を食べて歩き始めるとすぐに、下る人の渋滞です。急な階段で詰まっています。当たり前ですが、こちらのコースでも頂上に行くには急な上りがあるんですね。
 階段を下った右手に薬王院があります。

薬王院と頂上の間にある急な階段
薬王院と頂上の間にある急な階段

飯縄大権現を祀った本社
飯縄大権現を祀った本社

 色鮮やかな社です。両側に天狗さまがいます。
 早速、持参した100円硬貨2枚(家内安全用と商売繁盛用)を賽銭箱に投じ、二拝二拍手一拝の正式な作法を誰よりも真面目に執り行いました。
 歩き出してからふと気づきました。「あれ?薬王院って、神社?お寺?お寺だよね。あ、まずいな、神社の作法でお参りしちゃった。まいったなあ」などと後悔しつつ階段を下りていくと更なるショック。先ほどより立派な建物。え、こっちが本堂?お賽銭がもうありません。申し訳ございません。こちらでは合掌して拝礼のみ。

飯縄権現が本尊の本堂
飯縄権現が本尊の本堂

本堂、仁王門に向かう階段
本堂、仁王門に向かう階段

 後日調べたところ本堂、本社とも祀られているのは「飯縄大権現」で同じなのですが、本堂はお寺、本社は神社という扱いになっているとのこと。私のお参りの仕方はひとまず間違いではなかったようでひと安心。

手水舎
手水舎

四天王門
四天王門

 順番は逆になってしまいましたが、手水舎でお清めし、四天王門に一礼して薬王院を後にしました。ここからは観光客気分で高尾山を楽しめます。

山頂付近の茶屋
山頂付近の茶屋

薬王院の参道にある茶屋
薬王院の参道にある茶屋

テレビドラマの舞台になった茶屋
テレビドラマの舞台になった茶屋

 高尾山には至る所に茶店や売店があり、場所によっては行列ができています。稲荷山コースで登山者気分を、薬王院の参道で観光客気分を味わえるなんて、高尾山ならではの楽しみ方といえます。飯島直子さんと深田恭子が主役のドラマ「ハコイリムスメ」(2003年フジテレビ)の舞台となった「十一丁目茶屋」でおでんにビールを一杯、といきたかったのですが、車できているのでここは我慢。
 気分としては、歩いて下れそうなくらい元気だったのですが、レポートの仕事で来ているのですからケーブルカーを利用しないわけにいきません。

ケーブルカー高尾山駅
ケーブルカー高尾山駅

急傾斜のホーム
急傾斜のホーム

日本一の急勾配
日本一の急勾配

 ケーブルカーの料金は片道470円、往復900円。
 片道切符を握りしめて乗り込みます。階段になったホームを下って、車両に乗り込むとなんとなく違和感が。床が前のめりになっていました。つまり急なところに停車しているということでしょう。発車と同時に「きゃー」という子どもたちの歓声が響きます。私も思わず「おーっ」と声を漏らしてしましました。ジェットコースターのように落下したからです。日本一の最大勾配31度18分は、高尾山駅のすぐ下の区間なのです。麓の駅まではわずか数分で到着しました。上下2台のシンクロ運行ですから中間地点で交換します。上りのケーブルカーも、私が1時間はかけたであろう高低差271メートルを数分で上ってしまうことになります。ありがたい文明の利器です。

 登りはじめからおよそ3時間の高尾山登山でしたが、自分なりに楽しい時間が過ごせました。今回は上って下りただけの山登りでしたが、今度は観光客気分で来てみたいと思いました。食べたり、飲んだり、買ったり。なんだ、やっぱり「また登りたい」とは思わない、登山不向きな人間のレポートでした。

(LA No.106)

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