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金峯山寺と修験道のはなし

吉野山中千本の通り
吉野山中千本の通り

午前7時すぎ。雨上がりの吉野山中千本の細い通りを歩く。誰もいない。晩秋の風景の中で、冷たく湿った空気が動かない。夜来の雨で落ちた紅葉の葉が、路面に模様を描いている。遠くから読経の声が聞こえる。蔵王堂の方角。少し歩を速めると、右手の家の陰から現れたご婦人に『お早いですね』と声を掛けられる。『おはようございます』と返して、蔵王堂を目指す。

中千本から蔵王堂へ
中千本から蔵王堂へ

金峯山寺の本堂、蔵王堂の前に立ち、頭を垂れて合掌する。心地よい読経の響きが体全体を包み込み、無心の世界に誘う。読経の最後に東日本大震災、台風12号被害、原発被害などからの復興とともに「本日の参拝者」の家内安全などもお祈りいただいた。周りを見渡すと参拝者は私一人。すこし得をした気持ちになった。俗すぎるか。

金峯山寺(きんぷせんじ)について

金峯山寺は、奈良県吉野山にある金峰山修験本宗の総本山です。金峯山とは、吉野山から大峯山山上ヶ岳にかけての一帯を称し、古代より聖域として知られていました。金峯山寺は、7世紀後半にここで修行した役行者(えんのぎょうじゃ)が開創したと伝えられています。

1874年(明治7年)、明治政府により修験道が禁止され一時廃寺となっていました。1886年(明治19年)に仏寺として復興し、1948年(昭和23年)金峰山修験本宗が立宗し、総本山となりました。

金峯山寺の本堂「蔵王堂」は重層入母屋造り、桧皮葺き、高さ34メートル、四方36メートル。檜皮葺の建物としては世界一の大きさを誇り、国宝建造物に指定されています。堂々とした威容の中に、優雅さがあり、世界的にも高い評価を得ています。

蔵王堂には高さ約7メートルの本尊、蔵王権現が三体安置されています。今から1300年余り前、金峯山山上ヶ岳に役行者が一千日の修行に入り、感得された権現仏とされています。

金峯山寺本堂 蔵王堂
金峯山寺本堂 蔵王堂

役行者(えんのぎょうじゃ)について

『続日本紀』=797年(延暦16年)に完成した史書、によれば、役小角(えんのおずの又はおずぬ)は634年(舒明天皇6年)御所市茅原で誕生。幼少の頃より葛城山で修行するなど山林修行や苦行の末、金峯山にて金剛蔵王大権現を感得され、修験道の基礎を開いたと伝えられています。

呪術家としての名声は世間に知れ渡っていたが、699年(文武天皇3年)、韓国連広足(からくにのむらじひろたり)の虚偽の密告によって伊豆大島に流罪になり、701年(大宝元年)無罪がわかり、許されて都に戻りました。

701年6月7日に68歳で箕面の天上ヶ岳にて入寂したと伝えられています。

役行者と呼ばれるようになったのは、山岳信仰が隆盛となった平安時代以降とのこととか。

修験道(しゅげんどう)について

修験道とは、日本古来の山岳信仰に神道や仏教・道教などが混合して成立した、日本独自の宗教です。中心は実践性にあり、深山幽谷に分け入って、命がけの修行をし、霊力、験力を開発する道です。修験道の実践者を「修験者」または「山伏」と呼びます。
古代より日本各地の霊山にあった山岳信仰が修験道と結びついて、それぞれ独自のスタイルを生み出しました。また、密教と結びついた宗派も派生しました。

金峯山寺の修行は、修験道の開祖とされる役行者が修行した吉野〜熊野の山岳地帯を修行場としています。吉野金峯山寺から20数キロメートル離れた山上ヶ岳山上本堂(大峯山寺本堂)までを100回往復する「大峯百日回峰行」や1000回往復する「大峯千日回峰行」、修行をしながら山道を200キロメートル以上歩いて熊野本宮まで行く「大峯奥駈修行」などは、厳しい修行を積んだ修験者が挑む、人知を越えた最高峰の修行です。

国宝の仁王門
国宝の仁王門

・本文は、金峯山寺のホームページなどを参考に作成しました。

修験者の山道へ

金峯山寺を訪れたあと、回峰行の山道がスタートするという金峯神社まで行ってみることにした。バス停から社までの上り道。斜度は15パーセント、長さ100メートル程度。それだけで既に息が上がってしまった。修験者に求められるのは不屈の精神力なのであろうが、その前に強靱な体力も必要なのだろうと実感する。軟弱過ぎるが、還暦間近なのだからお許し頂こう。

金峯神社にお参りして、山道を目指す。

金峯神社 鳥居の右手奥から山道に入る

銀杏の葉で黄色に染まった道の先に、石畳と手すり付きの石段が続いている。これは一般ハイカー向けの道、「近畿自然歩道」の一部のようだ。
修験者の山道が始まるのは100メートルほど上ったところから。

金峯神社から山道への入口
近畿自然歩道の石畳と石段

山道に入ってみる。
雨上がりの12月とはいえ、空気が冷たい。そして暗い。大峯回峰行は深夜にここを通る。月夜であっても深い森で光は遮られる。提灯の灯りで、どの程度足元が照らせるものだろうか。滑りやすい足元に気をつけながら、ゆっくり上っていく。シーズンオフなのだろうが、誰もいない。森の中に一人だけ。熊やイノシシは出てこないだろうか。物の怪に取り憑かれないだろうか。早々に引き上げた方が良さそうだった。

山上ヶ岳まで続く厳しい山道
歩きやすい道ではない

この日は一日天気が悪かったが、蔵王堂を撮影したときだけ陽が差した。その奇跡に感謝。
吉野山下千本の「ひょうたろう」の美しくて美味しい柿の葉寿司。吉野の秋だけの味わいに感謝。

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