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巻頭インタビュー いまを生きる

ヒトとイヌの絆のはなし

ヒューマン・アニマル・ボンド(Human Animal Bond)という言葉をご存じですか。略してHAB(ハブ)とも呼ばれていますが、『人と動物の絆』という意味です。ペット(コンパニオンアニマルとも呼ばれる)への理解を深めると共に、動物と触れ合うことによって得られる効用を活用しようという活動の根本となる考え方です。そしてその対象動物はおもにイヌです。

イヌはヒトと最も古くから、最も多くの機会に接してきた動物です。ヒトとイヌが絆(信頼し合って飼い、飼われる関係)を結んだ経緯についてはいくつかの説があります。
第一の説は、少なくとも1万2千年前には人間はオオカミを飼い馴らしていたというものです。
第二の説は、イヌはヒトとの共同生活を始める数万年も前からオオカミとは別の種となっていて、オオカミとはちがった特徴をもっていたがためにヒトとの共同生活がはじまったという説です。
つまり、「狼が飼い慣らされてイヌになった」という説と「狼とは異なるヒトに飼い慣らされやすいイヌという種類がいた」という説があるということです。
いずれにしても、イヌが家畜化された最も古い動物であり、人間が長い期間にわたって手をかけてきたことで、他の家畜と比べて格段に品種が多く、形や大きさのバラエティが豊かであることは間違いありません。現在世界には700種から800種のイヌがいるといわれています。
ヒトがなぜイヌを飼うようになったかについては、やはり二つの説があります。何かの使役の目的があって飼い慣らしたという説と、ペットとして飼い慣らされているうちに使役の目的で使われるようになったという説です。最近有力といわれる説は後者のようです。
悲しいことですが、歴史的にヒトに飼い慣らされたイヌの重要な用途の一つは「軍事利用」でした。古代から中世、現代まで受け継がれてきました。一方何の役にも立たないイヌというのも中世には存在していたということです。人間の手によって品種改良されて多数の新しい品種が現れたのは11世紀のことで、その後16世紀頃には『かわいがられるだけのイヌ』というものが、確実に存在していました。

あまたの動物、様々なペットたちの中で、イヌは際だって緊密な信頼関係を人間との間で築いています。それはなぜなのでしょうか。イヌには独特の能力にあるからです。 第1の能力は、ヒトに慣れる能力です。
イヌは他の動物に比べると社会への適応に時間がかかります。そのことによって社会に適応しようとする時期に飼えば、慣れやすいということがあります。

第2の能力は、愛情表現力です。
イヌは音声によるコミュニケーション力は豊富ではありませんが、体や表情で多くのコミュニケーションを図ることができます。イヌはヒトに対して、愛情を表現します。尻尾を横に振りながら頭と全身を低くし、耳を引いて頭にぴったりつけ、飼い主に擦り寄り、飼い主の手や顔、耳を舐めようとします。

第3の能力は、ヒトの意思を理解する能力です。これが最も重要です。
ハーバード大学のヘア博士らの研究によれば、ヒトの視線を理解する能力は、チンパンジーよりイヌのほうが高いことが実験で証明されました。「餌はその箱の中にあるよ」といった意味を目配せで送ったところ、その意味を理解するチンパンジーの成功率は60%だったのに対し、イヌの成功率は80%でした。すなわちイヌは、ヒトの視線で意味を感じ取る視覚認知による社会コミュニケーションがとりやすいということです。
ヒトとイヌが信頼関係を結ぶ根源となっているのが、「アイコンタクト」目によるコミュニケーションだったのです。
本誌の中で多和田さんの訓練法がこう紹介されています。『最初の段階はアイコンタクトで犬と気持ちを通じさせるが、ある時から目を合わせないようにする。犬の方はそれまでの習慣から目を合わせようとするのだが、これには応えない。そのかわり「グッド!」と声をかけたり、体を撫でたりしてこちらの思いを伝えていく。盲導犬を使用するのは目の見えない人だからだ』。
つまり盲導犬と訓練士、盲導犬と使用者は、ヒトとイヌとが絆を結ぶ切り札ともいえる「アイコンタクト」を封印して、互いの絆を深めていることになります。

盲導犬になるイヌも凄いけれど、訓練士って仕事も本当に凄いことをやっているんですね。

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